REPORT

with 新型コロナのジュエリービジネス

jewelristレポート with 新型コロナのジュエリービジネス

次に、筆者なりの考えをまとめてみた。

第一の復活へのシナリオは何といっても、新型コロナウイルスのワクチン・特効薬の開発と、世界での感染拡大の早期終息である。これは、正に全人類の願いである。その上で、日本のジュエリービジネスにとっての復活へのシナリオを、4つのポイントに絞って考えてみる。

1 . 富裕層を中心とした反動消費

まず、大きく期待したいのが、長らくの制約からの解放による、ジュエリーへの反動消費であろう。今回のケースとは異なるが、リーマンショック、東日本大震災などの大きなアゲインストの後には、これまでジュエリーへの反動消費が見られた。これは不要不急の商材ではあるが、ジュエリーへの強い憧憬を持つ、コアなユーザーによるところが大きい。緊急事態宣言発令前の事ではあるが、海外旅行などの行動制限が強まる時に、それらの予定出費分でジュエリーを購入するケースも見られた。しかし、コロナウイルス感染拡大での経済的な打撃は、これまでにない大きなものとなっている。その意味から、裾野を広げたジュエリーへの反動消費は見込めず、富裕層を中心としたコアなジュエリーユーザの反動消費という、これまでとは一味違う、限定的な回復に止まるのではと考えられる。

経済活動を再開し始めた中国などでは、ファッション関連商品の商圏内でのオンライン・デジタルチャネルでの購入の急増といった、これまでとは違った購買行動への変化も見られるという。国内でもネット(オンライン・デジタル)販売、テレビショッピングなどの増加は大きく期待できる。また、リーマンショック後には、ジュエリーリサイクルビジネスのブームが起こったことを見ると、ジュエリーリサイクルビジネスの動向にも大きく注目したい。いずれにしても、ポストコロナのジュエリー消費には、これまでにない大きな変化が見られると考える。

2 . TO C & TO B ジュエリーイベント・フェアの開催

日本のジュエリービジネスの復活で大きく期待されるのが、TO C TO B 向けジュエリーフェアの開催であろう。ご承知のように予定されたイベント・フェアは、悉く中止・延期を余儀なくされた。ここでも最大の焦点は、いつから開催が可能となるのかという事である。このレポートは6月中旬に執筆しているが、8月初めくらいから、本格的な各種イベント・フェアの REOPEN ができればと期待している。

まず TO C 向けジュエリーフェアではあるが、大型のイベントでは会場の確保に苦労していると聞く。また何といっても来場者の心理の影響は大きく、コロナウイルス感染拡大後のイベントとしての、内容と対応などが強く求められる。そういった点から見ると、消費者が安心して来場できる、小売業ごとでの店外・店内催事などの充実が肝要であると考えられる。

次に、TO B 向けジュエリーフェアである。別表は日本・アジアの主なジュエリーフェアの予定表である。これまで1年間で開催されてきたフェアが、8月からの4ヶ月間に集中して開催される、超過密スケジュールとなっている。その中で8月に予定されていた、香港フェアと甲府ジュエリーフェアの中止が発表された。また、9月の香港フェアの開催も危ぶまれている。「モノと人」の移動が、どの程度スムーズになるかに成否はかかっている。また、急激に大きな経済的ダメージを受けたバイヤーとマーケットに、どれほどの購買意欲があるかは大きな不安材料でもある。出展社もバイヤーも、どのタイミングで、どのフェアをチョイスするかも難しい。そういったことから見ると、勝ち組のフェア、勝ち組の出展社の色分けがより鮮明になる、厳しい緊張感を持った展開が強いられる。

3 . 香港を核とした海外販路

前頁の表が、近年、日本のジュエリービジネスの好調を支えてきた、日本から香港へ輸出された宝石・貴金属関連(貿易統計:第14部第71類天然又は養殖の真珠、貴石、半貴石、貴金属及び貴金属を張った金属並びにこれらの製品、身辺用模造細貨類並びに貨幣)の金額の推移である。

これを見ても香港の重要性は一目瞭然である。しかしながら、コロナウイルス感染拡大前から、中国の景気減速の影響、台風、デモによる香港でのジュエリーフェアの低迷、そして、今回のコロナウイルス感染拡大によるロックアウトと変化の兆しもみられた。日本から香港への渡航は、現在のところ918日までシャットダウンされている。REOPEN 後へは期待と不安が大きく交錯する。

その他のアジア地域への日本からの宝石・貴金属の輸出金額を見ると、ここ近年、中国本土への伸びは目立っている。そして、ブライダルジュエリー小売業の進出が目立つ台湾、リサイクルジュエリーの輸出が好調なシンガポールへの輸出金額も安定して大きい。また、アジア以外では、アメリカへの輸出も目立っている。

いずれにしても、日本のジュエリー、リ・ジュエリービジネスともに、海外販路の拡大は重要な戦略となっている。

今後は、旧来のジュエリーフェア一頼りのビジネスからの脱却が求められる。そのひとつのカギが、ジュエリービジネスのオンライン・デジタル化である。

4 . ビジネスのオンライン・デジタル化の推進

1の項でも少しふれたが、ポストコロナでの日本のジュエリービジネスの復活へ、大きな鍵を握るのはビジネスのオンライン・デジタル化である。

消費者意識や購買行動も大きく変わり、ジュエリー業界の企業の多くが、ビジネスの再構築を強いられている。その潮流のなかで最も重要となるのが、ジュエリービジネスのオンライン・デジタル化の推進である。その詳細については、次の項から詳しく紹介したい。

REPORT LIST

講読・広告のお申込みは

お申し込みはこちら

隔月刊(1・3・5・7・9・11月)
年間購読料:1年(6冊)46,200円(税込)

Jewelrist電子版

2022年9月より、
電子版(デジタル版)の取扱いを開始

ご希望の方はこちら