REPORT
宝飾品業界とデジタル化
宝飾品業界とイノベーション 【スライドNo.49】
発刊から25周年を迎えた「ジュエリスト」という宝飾品業界向け雑誌があるのをご存知だと思います。
そのジュエリストの発行人であり、責任編集者である川村社長が、2020年1月号の巻頭レポートで次のように述べていらっしゃいます。
『考えるに2度、ジュエリービジネスを大きく伸長させるイノベーションがあったと考えている。1960年代から1970年代初頭にかけて、ジュエリー業界では第1のイノベーションである、「生産革命」が起こったのである。
次に1970年代の後半から1980年代初頭にかけて「販売革命」が起こったのである。「チェーンストアシステム」によって、大量販売方式が確立し、急速にマーケットが拡大したのである。製販両面においてのイノベーションにより、1975年に5,000億円程度だったジュエリー小売マーケット規模を、僅か15年で6倍の約3兆円にまで急成長させる、強力なエンジンとなったと考えるのである。』
『筆者は、今、日本のジュエリービジネスに必要なことは、第3のジュエリービジネス・イノベーションを起こすことであると考えている。そして、その3度目のイノベーションは、ジュエリービジネスのデジタル化であると考えている。』
前職の矢野経済研究所時代からを含め、日本のジュエリービジネスを40年にわたってウォッチし続けられてきた川村社長ならではの視点です。
最後に【スライドNo.50】
最後になりました。
デジタル化が宝飾品業界に何をもたらすのか?ひとつは、これまでになかった価値を創造できるようになります。
だれもがスマホ1台あれば、全く知らない相手であっても、簡単・迅速・安心・安全にグローバルで全方位の取引を行なうことができるようになります。
現物が目の前になくても、まるで自分が身に着け、ルーペで観察しているかのような疑似的な体験が得られるようになります。ボタンひとつで複数の販売チャネルをコントロールしたり、数多くお買い上げいただいた順にお客様リスト並べ替えてキャンペーンを行なったり、顧客ごとに割引き率を変更したりするできるようになります。
それらはジュエリービジネスに携わる私たち自身の手で実現しなくてはならないことです。もうひとつの目的は、顧客への「感動の提供」です。
今年1月5日、ジュエリー業界に大きな足跡を残したひとりの経営者が亡くなりました。カメリアダイアモンドのコマーシャルで一世を風靡した三貴の創業者、木村和巨氏です。
木村氏はことあるごとに、「ダイヤモンドは愛を伝える媒体である」とおっしゃっていました。情報のデジタル化・共有化が進むと、カカクコムのような企業が現れ、モノの価値をあっと言う間に「コモディティ」に換えてしまいます。ダイヤモンドなどは実質的に4Cで価格が決まってしまっているため、コモディティ化しやすいものの代表です。
しかしコモディティ化して、価格の安さだけで消費者に販売するのは、ジュエリービジネスとは言えないのではないのでしょうか?
私は「価値を創造し、感動を提供すること」がジュエリービジネスの根幹であると思います。そのためにデジタルイノベーションが必要であると信じて止みません。それがお客様をマーケットに呼び戻す力であり、また私たち自身が楽しく仕事する源泉だと思うのです。
皆さん、ぜひ一緒にデジタルで価値と感動を提供していきましょう。また、お配りしたスライドの最後に「デジタル化チェックシート」をご用意いたしました。デジタル化フェーズ1の5段階評価でお話しさせて頂きました内容と照らし合わせ、現時点のデジタル化達成状況をチェックして頂ければ幸いです。これで私たちの話は終わります。
長い時間、ご清聴いただきありがとうございました。