REPORT

宝飾品業界とデジタル化

宝飾品業界にとってのベストチョイスとは? 【スライドNo.15】

では私たち宝飾品業界はどのような道を選択していけばよいでしょう?まず、メーカー、卸、小売りに関係なく、ビジネスのやり方を、消費者のスマホ中心の生活パターンに合わせていかなくてはなりません。消費者に合わせる、とは、扱う商品やサービスをデジタル化する、ということです。できる限り自社の力でデジタル化を進めなくてはなりません。それが、ディスラプターの出現に備える最大の防御手段でもあるのです。「デジタル化?そんなめんどうなことはやりたくない、うちは今のままでいいよ。」、そういう方も当然いらっしゃるでしょう。

しかし人口の減少、結婚組数の減少、若年層のブランドやジュエリー離れなど、マクロデータから見ても、宝飾品業界にバラ色の未来が待っているわけではないのです。ゆっくり確実に沈んでいく船に身をゆだねるか、意を決して新しい未来を創造するか、道は二つしかありません。今ならまだ、自分で未来を選ぶことができます。

業界のデジタル化に必要な3つのフェーズ 【スライドNo.16】

私は、「デジタル化に取り組んでいくしか宝飾品業界に未来はない。」という立場です。ですからこの立場でお話を進めてまいりますが、私は宝飾品業界がデジタル化するには3つのフェーズが必要だと考えています。

フェーズ1は、個の企業が自社のモノやサービスをデジタル化し、それを経営戦略として機能させるようにすること。

フェーズ2は、数多くの企業が商品やサービスを、ひとつのプラットフォーム上にアップロードし、だれもが簡単に、見たり、調べたり、比べたり、売買できたり、という状態に整理すること。

フェーズ3は、世界中のほぼすべての商品やサービスがデジタル化された状態にすること。つまり世界中の宝飾品事業者が、いつでもどこからでも、あらゆる宝飾品情報にアクセスできる状態にすることです。

現段階ではフェーズ3は、壮大に思われるかもしれません。しかし世の中のあらゆるデジタル化事象に共通していることですが、変化はゆっくりやってきて、突然状況を一変させるのです。

顧客接点、仕入先接点(フェーズ2のボトル ネック)【スライドNo.17】

ここでフェーズ1、つまり個別企業が利益を増加させるためのアクションについてお話します。利益を増やすには、

売上を向上させる

コスト(仕入原価、経費)を低減する

という2つのことをどちらか片方、もしくは両方行なうかしか方法はありません。No.17のスライドの左側をご覧ください。売上を増加させる方法は、端的に言えば、「顧客との接点を増やす」ことです。これまでリーチすることができなかった顧客層に自社や商品のことを知っていただくこと、そしてその顧客層が簡単に自社や商品にアクセスできるようにすること、それが接点をつくるということです。

そのための「チャネル」は、2つあります。アナログチャネルとデジタルチャネルです。

アナログチャネルとは、店舗や事務所、展示会というリアルな「場」を指し、デジタルチャネルは、ホームページやECサイト、SNSなどのネット上の「場」を指します。アナログチャネルで顧客との接点を増やすには、「店舗を出店する」、という方法があります。店舗を新たに出店すれば売上は増えるでしょう。しかし在庫や、家賃や人件費などの経費も比例的に増加します。昨年10月、アパレル大手のオンワードが250億円の特別損失を計上して、600もの退店を行なうというニュースがありました。こうしたニュースに触れると、今の時代、店舗を増やすことは、必ずしも効率的な利益増加策とは言えないようにも思えます。

一方デジタルチャネルを利用して、出店と同じ効果を得るには、ECサイトを運営する、またはECモールへ出店するという方法になります。この場合、専用の在庫を用意する必要はありません。また、モールの顧客はポイント経済圏によって区切られているため、たとえば楽天とヤフーショッピングに同時に出品しても、異なる客層と接点を持つことができます。経費や業務量との兼ね合いですが、複数のショッピングモールと自社の販売サイトをうまく使い分けることが、顧客との接点を増やし、ひいては売上の増加につながります。。

弊社の経験上、ECの売上・利益は、掛けたエネルギーの累積値で決まります。ですから基本的なことを粘り強くやり続け、根気よく小さな改善を続けさえすれば、必ず業績は上向きます。

次に図の右側をご覧ください。仕入先接点を増やす、つまりコスト削減についてです。

コストを下げるには「仕入先との接点を増やすこと」が重要です。アナログな方法によって、仕入先を増やするには、IJTJJFのような展示会に出向くか、御徒町や山梨の卸業者やメーカーを一軒一軒訪ね歩という方法があります。また、デジタルチャネルを利用するには、仕入れ先のホームページをひとつずつ見つけては内容をチェックするという方法があります。たいへんな労力を必要としますが、今は、これしか方法がありません。その上、そうしたホームページを見つけても、商品をすぐに購入できるようになっているサイトはほとんどありません。つまり、デジタルによる仕入先との接点づくりは、機能していないのです。これは、宝飾品業界にとって、大きなマイナスポイントですし、業界を活性化する際のボトルネックになっている、と言わざるを得いません。こうした状態を見ると、フェーズ2を実現する土壌が整っているとはとても言えません。フェーズ2に移行するためにも、フェーズ1をどうするかをまず考えなければなりません。

デジタル化フェーズ1の5段階(小売業) 【スライドNo.18】

小売業を例にとると、フェーズ1はさらに次の5つの段階に整理できます。

第1段階は、自社のホームぺージがあり、それが機能している状態、

第2段階は、ヤフーショッピング、ヤフオク、楽天などのショッピングモールへ商品を出品している状態、

第3段階は、自社のネットショッピングサイトを立ち上げ、販売チャネルとして機能している状態、

第4段階は、自社サイトとモールとの複数チャネル販売、それらをSNSなどによる情報発信と組み合わせて、相乗的に効果を上げている状態、

第5段階は、リアルチャネル、ネットの複数チャネルを最適化し、統合的に運用している状態。またそのためのシステムがあり、客観的なデータ分析に基づいて、戦略立案・実行がなされていればさらによいと言えます。

第4段階、あるいは第5段階までできている場合は、かなり利益が出せる準備が整っていると状態にある、と言えます。小売業を例にとりましたが、メーカーでも卸でも、顧客や仕入れ先との接点をどのように増やしていくかが、課題なのです。

フェーズ2で期待できる4つの革命的変化 【スライドNo.19】

私たちは宝飾品業界全体をフェーズ2に進ませるため、業界内だけで機能するプラットフォームを構想しています。

「ぺリド」という名前のプラットフォームです。ぺリドについては、後ほどお話をさせていただきますが、きちんと設計されたプラットフォームは、次に挙げる4つの分野において革命的な変化が起きます。No.20のスライドに示した、S,O,D,Eの頭文字で示した機能です。

まずは検索=searchです。プラットフォームにアップロードされているすべてのモノ、技術、ノウハウ、サービスを探し出し、比較検討することが可能になります。

次に全方向取引=Omni directive Transactionです。

たとえば、とある小売店に来店された消費者が、商品をお買い上げいただく代わりにお手持ちの商品の下取りを希望されたとします。買取の知識のない販売員が、プラットフォームにあるライブ機能を使ってスマホでその商品映像を流します。するとその映像を視聴した全国の買取会社が、その商品の買取価格を提示します。

特別な知識がなくても買取業務がその場で完了します。このように川上から川下へだけではない、これまでは考えもしなかった全方位取引が可能になります。

距離=distance

商品を見たり、探したり、取引を行なうための国や地域と言った距離という概念を小さくします。プラットフォーム側に、言語や通貨、税金、送料や保険料などをその場で表示させる機能を付加することにより、いつどもどこからでも、商品を知る、見る、比べる、売る、買うなどができるようになります。

経験=experience

バーチャルな装着体験の提供や、高精細な画像を使った検品なども新しいデジタル技術によって可能になります。わざわざ現品を見なくても、購買意思決定ができる技術が開発されるはずです。こうしたことを実現するためにも、フェーズ1を理解し、ワンステップずつ実行して行っていただきたいと思います。

SOFTBANK WORLD2013 基調講演 【スライドNo.20】

ここで少し弊社、株式会社セルビーのお話をさせていただきます。

弊社は、現在、商品をフルデジタル化し、約2500点の在庫を6つのチャネルで同時に販売しています。

デジタル化に舵を切るきっかけは2013年でした。その年のソフトバンクワールドの基調講演で孫正義社長が「Digital or Die」という言葉を使い、デジタル化の重要性について説明をしました。

2013年当時の弊社の問題点その1 【スライドNo.21】

当時、弊社は、銀座にある店舗とヤフーオークションという2つのチャネルで販売を行なっていました。

もともと弊社は宝石の買取からスタートした会社です。手持ちの宝飾品を売りたい方をウェブサイトによって集客し、買い取った商品をヤフーオークションで販売する、というビジネスモデルでした。

会社を設立して5年ほどはほとんどライバルもなく順調に業績を伸ばせましたが、創業から10年ほども経つと、日本中競合だらけになっていました。

2013年頃にはもう買い取った商品を販売するだけでは生きていけなくなり、買取品以外の商品であっても、利益を出して販売する体制をつくらなければならなくなりました。銀座店は、数十万~二、三千万円クラスの高額品を扱う一方、ヤフオクの単価は数万円です。顧客も売り方も全く共通性がないため、在庫も別にしなければなりません。

売上を向上させる方法として当社が選択したのは、ヤフオクと在庫を共通化しながら、楽天市場へ出店することでした。つまりECチャネルをひとつ増やすというということです。楽天市場に出店するにあたり、社内で議論が巻き起こりました。争点、仮説という言葉に言い換えてもいいかもしれませんが、

⃝顧客との接点を増やせば、ほんとうに売上が増えるのか?

⃝ポイント経済圏が異なるとはいえ、楽天とヤフーはほんとうに顧客層がかぶらないのか?

⃝ヤフオク&楽天で在庫を共用すれば、ほんとうに新たな在庫負担は不要か?

というものです。結論を申し上げると、これらの仮説はすべて正しかったのです。

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