REPORT

宝飾品業界とデジタル化

日本のジュエリービジネスの先行きに更なる暗雲が立ち込めている。

昨年後半からの日本国内のジュエリービジネスの低迷、香港ジュエリーフェア・中国人バイヤーの陰りなどに加え、20201月のIJTの不調、そして新型コロナウイルスの感染拡大による不安材料により、日本のジュエリービジネスの先行きに更なる大きな暗雲が立ち込めてきた。

その中で、日本のジュエリービジネス関連企業は、まさに新大陸ともいうべきニューマーケット・ニュービジネスを強く希求している。

では、日本のジュエリービジネスにおける、希望のニューマーケット・ニュービジネス・新大陸とは何なのだろうか?果たして、今、日本のジュエリービジネスは何を成すべきなのであろうか?

筆者は当社刊『JEWELRIST2020年新年号で、「日本のジュエリービジネスに新大陸はあるか」と題し、ニューマーケットの探索からジュエリービジネス・イノベーションへとの主旨で巻頭新春レポートを執筆した。

簡単に概要をまとめると、日本のジュエリービジネスには、2度のジュエリービジネスを大きく伸長させるイノベーションがあったと考えている。1960年代から1970年代初頭にかけて、ジュエリー業界では第1のイノベーションである、「生産革命」が起こったのである。それは、ロストワックス製法の普及によって、大量生産方式が確立したことである。次に1970年代の後半から1980年代初頭にかけて「販売革命」が起こったのである。「チェーンストアシステム」によって、大量販売方式が確立し、急速にマーケットが拡大したのである。製販両面においてのイノベーションにより、1975年に5,000億円程度だったジュエリー小売マーケット規模を、僅か15年で6倍の約3兆円にまで急成長させる、強力なエンジンとなったと考えるのである。

そして、今、3度目のイノベーションが必要とされていると考えている。今、日本のジュエリービジネスに必要なことは、ニューマーケットの探索から第3のジュエリービジネス・イノベーションを起こすことであり、その3度目のイノベーションは、ジュエリービジネスのデジタル化であり、その中で筆者が最も注目する未来(これから)のKEY PERSONとして、Roni Xu(ロニジョー)女史を紹介したのである。彼女はオックスフォード大学 大学院修士課程を卒業、2014年株式会社楽天に入社、企画部にて予算管理・国内&越境EC業務を担当、2016年株式会社ORIGAMI入社、資金調達・事業開発を担当、2019年株式会社セルビーのデジタル担当役員に就任、同時に国際版宝飾品 B to B オンラインプラットフォーム事業開発のため、株式会社ペリドを設立し代表取締役CEOに就任した。その才媛の彼女が主宰する国際版宝飾品専門 B toB モール『ぺリド(PERIDOT)』に、筆者は大きく注目と期待をしているといった内容である。

そして本年1月に開催されたIJTで、株式会社セルビー 代表取締役社長 松谷稔哉氏と、株式会社ペリド 代表取締役 CEO Roni Xu(ロニ ジョー)女史、が『宝飾品業界(ジュエリービジネス)とデジタル化』とのタイトルでセミナーを開催した。

本号ではそのセミナーでの両氏の講演内容を誌上セミナーとして掲載する。読者の皆様に是非とものご一読を願うものである。

 

 

セルビーの松谷と申します。お忙しい中本日は株式会社セルビー、株式会社ペリド共催のセミナーにお越しいただき誠にありがとうございます。

本題に入らせていただく前に、用語と定義について確認させていただきます。今回使用するスライドを印刷したペーパーは行き渡っていますでしょうか?お話の中でスライドの何番をご覧ください、と言う場合があります。その際はスライド左下の番号で確認をお願いいたします。使用するデジタルに関する用語とその定義については、スライドのNo.3からNo.9に示したとおりとさせていただきました。

用語と定義【スライドNo.3~9】

デジタル化

デジタル・トランスフォーメーション

マーケットプレイス

B2B及び、B2C

ECプラットフォーム

アナログチャネル

デジタルチャネル

to O

Omni Channel

サイトとモール

ディスラプター

以上のような用語を使ってお話を進めてまいります。では本題「宝飾品業界(ジュエリービジネス)とデジタル化」に入らせていただきます。

デジタルで宝飾品業界は儲かるのか? 【スライドNo.10 ~11】

最近、業界の経営者の方々とお話をすると、「5年後、10年後が不安。香港に続く、近くて便利で売れるマーケットはどこなんだろうか?」そういう声をよくお聞きします。

それに対し、「デジタル化に取り組んでいくしか宝飾品業界に未来はないとのでは?」と申し上げると、「デジタル化すると儲かるのですか?」、という質問されます。

ですので、まずその答えを最初に申し上げます。まちがいなく儲かります。ただし条件が付きます。

デジタル化によって儲けるための条件とは 【スライドNo.12】

その条件とは何なのかと言えば、「経営トップが、デジタル化を自社の重要経営課題として位置付け、全社戦略として取り組む」ことです。

「経営トップ」、と申し上げましたが、企業規模は関係ありません。社長一人だけの会社も、社員が100人、1000人の会社であろうと同じです。トップ自身が今、重要な分岐点に立っていることを自覚し、会社を挙げてそれらに取り組めば、デジタル化により、現状より利益を増やすことは可能です。特にテクノロジーと生活とを結びつけて考えることが大切なのですが、

今世の中で何が起きているか、あるいはこれから何が起こるか、

その世の中の変化にどう対応していけばよいのか、

こうしたことを整理して、どのような分野へ投資を行うのか?、組織や戦略をどうするのか?を考えることです。

そうしなければ、儲けるとか楽しむどころではなく、生き残ることさえ、困難な状況に陥るかもしれません。今、業界が分岐点に立たされていることは間違いないのです。

デジタルの罠1~2【スライドNo.13~14】

ここ数年で、一般消費者の生活は、大きく変化しました。スマートフォンから取り出せる情報を中心に生活するようになったのです。スマートフォンから取り出せる情報はデジタル化された情報だけです。デジタル化されてない情報にはアクセスすることはできません。どんなに重要な情報であっても、スマホからアクセスできなければ、その情報はこの世に存在していないのと同じです。

他の業界のお話になりますが、音楽や書店流通の業界では、アップルやアマゾンなどのIT企業が業界構造を一変させてしまいました。こうした業界外から突然やってくる企業は、既存の業界慣習や秩序を破壊し、新しいルールをつくりあげ、彼らのルールに従うか、事業を諦めるか?彼らはそうした選択を求めます。

業界の外からやってくる破壊的な企業のことをディスラプターといいます。私たちの業界にディスラプターが現れないと誰が言い切れるでしょう?書店業界も、音楽業界も、旅行業界も、まさか外部の企業にビジネスルールを変えられてしまうとは全く思っていなかったのです。

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